ナダルのタイブレーク取得率について

こんにちは。

テニスのことを書くのは地味に2ヶ月ぶりのようです。

クレーシーズンに向けてぼちぼちテニス観戦に復帰しようとしていましたが、まさかコロナのせいでこんなことになるなんて思いもしませんでしたね・・・。このままいくとシーズンまるごと消滅する可能性すらあるので、早いこと打開策が見つかって欲しいところです。

そんな状況ですが、1ヶ月半ぐらい前に書こうと思っていたネタを書こうと思います。データ自体はその時既に調べ終わっているのであとは書くだけだったわけですが、まあその書く作業が大変なので重い腰を上げられずにズルズルとここまで引っ張ってしまいました・・・。

 

それでは本題です。

全豪で非BIG4(ティエム)相手にナダルが1試合でタイブレークを3つも落として負けるという、なかなかメンタルにくる負け方をしたのが今回の記事のきっかけです。

ナダルファンの方ならわかると思いますが、フェデラージョコビッチと比べてナダルタイブレークに弱いという印象がありませんか?もちろん明らかな格下選手相手であれば、「相手が勝手にビビって自滅するだろうなあ」と気楽に眺められますが、トップ10相手だとタイブレークまでもつれた時点でそのセットは落としたものだと思ってしまいます。1ポイントリード(1回ミニブレーク)しただけではアドバンテージは感じられず、逆に1ポイントリードされるともうタイブレークは落としたような感覚になります(私だけ?)。

 

というわけで、そんなナダルタイブレークブレに関するデータを眺めてみるというのが今回の内容です(※以下のデータは全て全豪終了時点でのものです)。データは基本的にTennis Abstract(http://www.tennisabstract.com/)のものを使用していますが、一部ATPの公式のものもあります(そのせいで多少のずれがあります)。

 

早速いきます。まずはタイブレークの取得率です。

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通算タイブレーク取得率

フェデラージョコビッチと比べるとタイブレーク取得率は低いです。ただ、それでも現役でナダルと同程度の数字の選手はビッグサーバー(イズナー、ラオニッチ)しかいないので、決してタイブレークが苦手というわけではありません(あくまで比較対象がフェデラージョコビッチだからそう感じてしまうだけ)。

このタイブレーク取得率を年別に分けると次のようになります。

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年別タイブレーク取得率

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年別タイブレーク取得率(グラフ)

2008~2013年頃は安定して67%以上という高い取得率を誇っています。逆に低迷期だった2014~2016年頃は60%を下回っています(確かに当時はタイブレークは落とす気しかしなかった)。

続いてサーフェス別に分けてみました。

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サーフェスタイブレーク取得率

クレーで取得率が高いのは予想通りですが、それでも思ったよりは高くない印象です。ただ、クレーのナダルであればタイブレークまで縺れること自体がそもそも普通ではありません(大抵6-2とか6-3ぐらいのスコアでセットをとる)。タイブレークまで縺れるということは、それぐらい自身の調子がイマイチ、または相手の調子がよほど良いということなので、この数字になっているのだと思います。

グラスでの取得率がキャリア平均よりも高いことは意外でしたが、それ以上にハードでの取得率が低いことの方が目立ちます。

次は大会別(GS)の取得率です。比較用にMS合計の取得率も記載してあります。

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大会別タイブレーク取得率

RGでクレートータルよりも10%以上数字が上がっているのはすごいのですが、逆に(クレーの中でもずば抜けて強くなる)RGですら22回もタイブレークまで縺れたことがあると考えると、「相手選手は頑張ったんだな・・・」とさえ思ってしまいます。

GSの中でもAOだけは大分数字が悪いです。数字だけで言えば低迷期だった2014年の取得率とほぼ同じです。今年の分(3-3)を除いても数字的にはほぼ同じなので、なぜかAOだけはタイブレークが苦手と言えます(が、それを説明できるような理由が特に思いつきませんでした・・・)。

次はラウンド別の取得率です。

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ラウンド別タイブレーク取得率

RRはファイナルズ限定ですので、相手選手の強さも考えると50%とれていれば十分だと思います。それ以外の通常の大会では、ラウンドに関係なくほぼ60%以上はとれています。しかし、その中でQFだけは明確に取得率が低いです。

理由としては、QFが1つの山場だからだと思います。R16までは明らかに力の劣る選手との対戦が多いのであまり苦戦せず、SF以上になると(そこまで勝ち上がれるぐらい)調子がいいのでタイブレークもとれるのだと思います。しかし、QFは相手選手のレベルが1段上がりますし、ナダル自身の調子が悪くてもギリギリ勝ち上がれてしまうラウンドでもあります。そのため、勝つにしても負けるにしても、ナダルの調子が良くない時に一番苦戦するために、他のラウンドよりも取得率が低くなっているのだと思います。近年で言えば、ナダルが大体膝を痛めるのってQFあたりですしね・・・。

次は対戦相手のランク別でのタイブレーク取得率です。

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対ランク別タイブレーク取得率

この表を見て、短絡的に「負ける試合は、タイブレークを落とすから負ける」と考えるのは正しくありません。負けとタイブレーク因果関係として捉えるのではなく、相関関係として捉える方が正しいでしょう。具体的には、「負ける試合ではタイブレークを落としやすい」し、「タイブレークを落とす試合では負けやすい」ということです。

「何を当たり前のことを言っているんだ?」と思われるかもしれませんが、「負ける試合ではタイブレークを落としやすい」し、「タイブレークを落とす試合では負けやすい」ということと、「負ける試合は、タイブレークを落とすから負ける」ということは、それぞれ意味するところは明確に異なります(前者は「負けとタイブレークを落とすことは同じレベルの事象」であるのに対し、後者は「タイブレークを落とすことが負けの前提」となっています)。

 

ここからは他選手との比較です。次のデータのみ、ATP公式の数字を扱っています。

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選手別タイブレーク取得率

BIG4は赤色、それ以外の現役選手は黄色です。BIG4の中では最も取得率が低いですが、こう見ると歴代のトップ選手と比べても遜色ない数字です。基本的にトップ選手であればタイブレークも強いということがわかりますが、イズナーやラオニッチのように、サーブの強い選手は同程度のランキングの選手よりもタイブレーク取得率は高くなる傾向が見られます(そう考えると、サーブが強くない割に錦織のタイブレーク取得率が高いのはすごいですね)。

最後に、タイブレークがある試合とない試合での勝率の比較です。

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タイブレークを含む試合の勝率比較(BIG4)

タイブレークがある試合では、タイブレークがない試合と比べて10%も勝率が下がっていますが、それは他のBIG4でも同じです。相手からすれば、普通にセットをとる(=最低でも1ブレークアップの状態でセットを終えなければならない)よりも、それなりに運も絡むタイブレークまで持ち込んでからセットをとる方が可能性が高くなるので当然ではあります(簡単とは言っていない)

 

ここまで色々とデータを眺めてきましたが、ナダルタイブレークが苦手というわけでもなければ、他の選手に大きく劣っているというわけでもないことがわかりました。結局のところ、勝敗とタイブレーク取得率を決める根本的な要因は自身の調子であって、 調子の良し悪しが結果として現れているに過ぎません。

ただ強いて言えば、タイブレーク取得率がGS中で最も低い全豪の、さらに(RR除く)全ラウンド中で最も低いQFで、自身の調子がイマイチで、相手の調子が良いという、悪い要素がこれでもかと組み合わさっていることを考えると、あの負けは起こるべくして起こったのかと今は思います(それでも1回ぐらいはタイブレークとってほしかった・・・)

次のネタはまだ全然思いついていませんが、もしかしたら過去の試合について書くことになるかもしれません(録画してある試合を観て、感想やら分析やらを書く?)。