2020年ナダルのスタッツまとめ

こんにちは。

テニスファンの皆様、2020年シーズンお疲れさまでした。

コロナのせいで多くの大会が中止になりましたが、夏頃から制約はありながらも少しずつ大会が開催されるようになりました。春にはあれだけ物議を醸した全仏の秋開催でしたが、色々ありながらもなんとか最後まで終えられたので、なんだかんだでよかったのかと思ってしまいます(喉元過ぎれば熱さを忘れる)。

ティエムが全豪ではジョコビッチと死闘を演じ敗れるも準優勝し、全米ではナダルジョコビッチ不在のチャンスをみごとに生かして悲願の初GS制覇。さらにファイナルズもメドベージェフとともにナダルジョコビッチの2枚抜きを達成(しかし去年同様、優勝はできませんでしたが・・・)。メドベージェフも去年のファイナルズ全敗から一転して全勝での完全優勝。来年以降ハードコートでは、ナダルはもちろん、ハードを得意とするジョコビッチですら、この二人に勝つのは難しいかもしれません。・・・まあクレー(特に全仏)に関しては、相変わらず並み以上の調子のナダルに勝てる選手はティエムぐらいしか見当たりませんが(ナダルが好調ならティエムですら勝てそうにない)。

ちょうど去年の同じ時期に書いたスタッツの記事では、

BIG4時代もようやく終わりが見えてきており、若手がその引導を渡そうと躍進しつつも、BIG4が最後の抵抗を見せているというシーズンであったような気がします(と言いながら、GSに関してはまだBIG4が強い状況ではありますが・・・)。

と書いていましたが、今年もこの文章をそのまま使えますね()。

ただ、ハードでも若手キラーっぷりを発揮していたナダルですら、クレーが得意な(はずなのにハードの方がビッグタイトルが先になった)ティエムや、H2Hでは無敗だったメドベージェフに初敗北を喫しているあたり、着実に世代交代は進んでいると実感しました。もうここ5年以上、「いつまでこいつら(フェデナダジョコマレ)の時代が続くんだ」と嘆かれ続けてきましたが、いざその時が迫ってくるのがわかると寂しさを感じます。

ただ、今年は色々とイレギュラーだったこともあるので、また来年になったら事態が変わってくるかもしれません。それこそ、今年を手術とリハビリに費やしたフェデラーが、また新たな武器をひっさげて若手を狩りに舞い戻ってくるなんてことがあるかも?

 

さて、前書きのつもりが2020年シーズンの振り返りみたいなものになって想定よりも大分長くなってしまいました(汗)。そろそろ本題の2020年のナダルのスタッツ振り返りをしようと思います。

というわけで、早速スタッツ一覧です。

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ナダルのスタッツ一覧

 ・スタッツはATPの公式サイト準拠です。一部独自に追加した項目もあります(Aces/gameなど)。

・2002年と2003年は試合数が少ないので、キャリア平均やキャリアハイの対象からは除外しています。

赤字はキャリアハイ、黄色塗りつぶしはキャリア平均以上です。

・単年成績は合っている(確認済み)のに、通算成績になるとなぜかATP公式と合いません(ATP公式の集計ミス?)。

サーブ編

・Aces/game、1st Points Won、2nd Points Won、BP Faced/game、BP Saved、Service Games Won、Total Service Points Wonがキャリア平均以上です。特にAces/gameはダントツのキャリアハイだった昨年の0.368をさらに上回るキャリアハイの数字となりました

・逆にDF/gameと1st Serveはキャリア平均よりも大分悪いです。特に1st Serveはキャリア最低値だった昨年の65%をさらに下回る最低値でした。その影響もあって、通算の1st Serveが昨年までは69%であったのが、今年のスタッツも含めると68%に低下しました。

去年と同様に、サーブ改造の結果が数字に表れています。ざっくりと言えば、「エースをとりやすくなった代わりにDFが増えた」というものです。去年は試合を観ていると(前年よりも)DFが増えたことが体感的にもわかりましたが、今年もそれと同水準のDF数となりました。通算のDF/game(0.135)と比べると直近2年(0.160、0.159)は大分悪いですが、実は暗黒期だった2015年(0.172)と2016年(0.162)よりは悪くありません。その2年と同じぐらいのDF/gameでありながらも、エースの数が大きく増えたことにより、サービスゲームの獲得率には大きな差が生じています。

 

総合的に評価すると、今年はキャリア平均を少し上回るスタッツです

ちなみにキャリアハイを更新したAces/gameですが、ジョコビッチはキャリア平均で0.434フェデラーに至ってはキャリア平均で0.609という数字なので、それを見た後だと0.4にすら届かないナダルの数字はやっぱり低いよなあとは思います(もう少しエースで楽にポイントとれてほしい・・・)。

リターン編

2nd Return Points Won、BP Converted、Total Points Wonがキャリアハイです。BP Opportunities/game以外の全項目でキャリア平均以上です。BP Opportunities/gameはキャリアで見てもかなり低いに値であるにもかかわらず、BP Convertedはキャリアハイです。BPの場面は多くないながらも、その少ないチャンスをほぼ2回に1回はものにしていると考えれば十分ではないかと思います。

BP Opportunities/gameが低いのは、今年のクレーでの試合数が例年よりもかなり少ないからだと思います。例年であれば、モンテカルロバルセロナマドリード、ローマ、全仏の5大会になるはずが、今年はローマと全仏しかなかった上に、全仏2週目に入るまではプレーが低調だったので、BPの場面が少ないのでしょう。

Win/Loss編

勝利数はキャリア全体でも3番目の少なさです。2002年(1勝)と2003年(14勝)が少なすぎるのでこれらを除くとワーストです。ただ、これはコロナで試合数が少なかったせいなので仕方のないところではあります。その代わりに、全仏通算100勝キャリア1000勝という節目の記録を達成しているので、少ない割には中身の濃いものとなっています。一方、勝率は4年ぶりに80%を切りましたが、前述の通りクレーの占める割合が少ないことを考えると、そこまで悪くはない数字だと思います。

まとめ

・サーブはキャリア平均を少し上回る出来

・エースの割合は過去最高

・代償として1st inは過去最低

・リターンは2ndリターンの獲得率とブレークの確率が過去最高

あとがき

2015~2016年の頃は「確率重視の入れにいくサーブよりは、率を落としてもエースを狙えるように変えるべきだ」と常々考えていました。実際、ここ数年はその方向を目指しているようではあります。ただ、エースの確率が上がったことと引き換えに、1stが入らないとそれが続く時間帯が以前よりも増えた気がします。2015~2016年の頃はラリーでポイントをとれる保証がまるでなかったので、ラリーに頼らなくてもいいエースを望んではいましたが、2017年以降はラリーでポイントがとれる状態に戻ったので、無理に確率を下げてまでエースを狙わなくてもいいのではないかと思っています(ああしたらこう言う)。

今年の負けた試合(ファイナルズのティエムやメドベージェフ戦)では、1stが入らなくてキープに苦しむ場面が多々ありました。こうした1stが入らなくてキープに苦しむ時間帯というものはどのプレイヤーにだってあります。ただ、例えば前述のティエムやメドベージェフは、1stが入る時間帯ではキープに苦しまないぐらいの1stサーブを持っています。ナダルもそれぐらいのサーブであれば問題ないのですが、実際にはそこまでのサーブではありません。そう考えると、そこまでフリーポイントがとれるわけでもない1stサーブの確率を下げることは悪手なのではないでしょうか。個人的には、サーブ単体の強化ではなく、相手リターンからの3球目攻撃まで含めた形でサーブを向上させる方向にするのが一番よいと思います(レフティお得意の「ワイドへ逃げるサーブ→オープンコートにフォア」の形)。 

さて、来年のツアーがどうなるかはわかりませんが、クレーで2017・2018年レベルで元気に躍動するナダルが見られることを期待しながら終わりにしようと思います。