芝はベテランに有利なサーフェスなのか

こんにちは。

前回の記事を投稿した結果、尊敬するTSDさんからルールブック解読班の一員として認めていただきました。ルールブックに目を通す頻度はそこまで高くはないと思いますが、今後は疑問に思ったら必ずルールブックに目を通そうと思います(宣言)。

他にやらねばならないことがあるのですが、そういう時に限って執筆意欲が高まるので良くないですね・・・(テスト前に掃除が捗るアレ)。

前書きはこのぐらいにしておいて、本題に入ります。

 

最近よく言われるように(私自身もよく言っている)、ここ3年ぐらいで若手が台頭し、停滞していた世代交代が急激に進み始めました。特に今年は、GSでもSF以上に進出する若手が複数現れました(全豪チチパス、全米メドベージェフ・ベレッティーニ)。 BIG4時代も確実に終わりが見えてきています。

ただそんな状況でありながらも、唯一ウィンブルドンだけはそのような兆候は見られません。全仏も相変わらずナダルの独壇場ではありますが、ティエムという明確な対抗馬がいるだけまだマシです。ウィンブルドンだけは若手が活躍する姿が想像できませんし、BIG4に対抗できそうな選手もいません。

理由としては、

芝シーズンが短すぎる→若手が十分な経験を積めるだけの試合数をこなせない。10年以上現役でいるベテラン勢との経験の差が他サーフェスよりも圧倒的に大きい

サーブの比重が大きい→近年は大分スローなサーフェスになっているようなので、試合におけるストロークの比率も上がってきてはいるものの、ベテランにとっては他サーフェスよりも断然スタミナを温存しやすい。また、若手にあまりリターン巧者がいないというのも大きい(他サーフェスよりもブレークが難しい)。

ボールが跳ねない→若手は長身の選手が多いため、特にスライスを持ち上げるのがベテランと比べて大変(なはず)。

あたりが大きいと思います。

みなさんも直感的には理解できると思います。ただ直感的に正しく思えるとしても、きちんと数字で確かめなければならないと思ったので、今回の内容を執筆するに至りました。

 

そこで、ウィンブルドン出場選手の平均年齢と、他の大会の出場選手の平均年齢を調べました。比較にあたっては、同じGSということで全豪、全仏、全米を調べました。集計期間は2005年と2009~2019年です。実は2000年、1990年、1980年も集計している途中なのですが、面倒なので放置しています()。また、集計の都合上、1R~4Rまでで敗退した選手の年齢は集計していません(あとがき参照)。

それでは集計結果を示します。年齢についてですが、例えば全仏ナダルのように、大会期間中に誕生日を迎える選手の扱いが面倒なので、大会開催日の初日時点での年齢としています。

※AO=全豪、RG=全仏、WB=ウィンブルドンUO=全米です。

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4R→QFに進出した選手の平均年齢

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QF→SFに進出した選手の平均年齢

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SF→Fに進出した選手の平均年齢

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優勝した選手の年齢

多少のブレはあるにしても、全体的に緩やかな右肩上がりになっています(世代後退・・・)

先に3つ目と4つ目のグラフについて補足します。ウィンブルドンに限らず、GSで優勝した選手はほぼBIG4ですし、決勝に進出する選手も高確率でBIG4なので、他のGSと比較してもあまり意味はないかと思います(が、参考としてご覧ください)。優勝した選手の年齢が突然上がったり下がったりするのはほぼフェデラーが原因です。BIG4と言ってもフェデラーだけ大分年齢が離れてますからね・・・。本筋ではないですが、2005年で表示範囲からはみ出しているナダルの異様さよ・・・。

さて、問題は4RからQFに進出した選手と、QFからSFへ進出した選手の平均年齢です(上から2つのグラフ)。2016年以前は他のGSと差がなかったり、他のGSよりも平均年齢が低かったりします。しかし、2017年以降は常に右肩上がりで、他のGSよりも常に平均年齢が高い状態となっています

この上から2つのグラフのうち、ウィンブルドンだけを抽出したのが次のグラフになります。

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ウィンブルドンでQF、SFへ進出した選手の平均年齢

なんと2014年以降、常にSFに進出した選手の方が平均年齢が高いという結果になっています。まあ平均年齢を算出する際に、BIG4の占める割合が増えるので当然と言えば当然なんですけどね・・・(8人中2人なのか4人中2人なのかという話)。

さらにもう一歩踏み込んで、今度は各ラウンドに進出した選手のうち、最年少の選手の年齢を並べたグラフを示します。

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4R→QFに進出した選手のうち最年少の選手の年齢

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QF→SFに進出した選手のうち最年少の選手の年齢

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SF→Fに進出した選手のうち最年少の選手の年齢

やはり他のGSと比べても、直近3年ではSFまでの選手の年齢が高いですね。決勝に進出した選手となると、2017年は全豪がフェデラーナダル、全仏がナダルとワウリンカ、全米がナダルとアンダーソンという高齢ペアなので、ウィンブルドンチリッチ(当時28歳)ですら若く見えるという・・・。

ちなみに決勝進出選手のグラフ(3枚目)において、2010年頃から2016年頃までほぼ一定の傾きで増加している理由は大体ジョコビッチです。BIG4の年齢を比べると、フェデラーナダル>マレー≧ジョコビッチなので、BIG4同士の決勝になり、その一方がジョコビッチだと、最年少の選手は必然的にジョコビッチになります。なので、この期間のグラフは実質的にはジョコビッチの年齢グラフと言ってもよいでしょう()。
先ほどと同様に、上2つのグラフからウィンブルドンだけを抽出したのが次のグラフになります。

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ウィンブルドンでQF、SFへ進出した選手のうち最年少の選手の年齢

もうくどいので多くは語りませんが、高齢化が進んでいますね・・・。

結論

・直近3年では、芝で上位ラウンドに進出した選手の平均年齢は、他のサーフェスの平均年齢と比べて高い。

・各ラウンドにおける最年少の選手の年齢を比べても、やはり他のサーフェスよりも年齢が高い。

あとがき

執筆にあたり、誕生日のデータベースを作成するのが一番大変でした。まずは今年のファイナルズ終了時点でのランキングトップ100までの全選手の誕生日を調べました(が、この時点で既に誕生日調査を投げ出したくなるぐらいには疲れました)。選手の誕生日を(csvファイルなどで)一括で入手できるデータベースがあるならいいのですが、そんなニッチなものは存在しないだろうと思うので、一人一人のプロフィールで誕生日を調べました。本当は本戦出場選手全員で集計するつもりでしたが、そのためには約1000人分の誕生日を調べなければならないので、泣く泣くQF進出以降の選手のみに絞りました。また、年齢計算をするにあたり、ExcelのDATEDIF関数というものの存在を初めて知りました(普段使うことなんてまずないので・・・)。今後ネタが尽きたり、よっぽど暇になったら集計範囲を拡大するかもしれません(期待はしないでください)。