ツアーファイナルズRRについて

こんにちは。

今回の内容はツアーファイナルズRR(ラウンドロビン)の勝ち抜けについてです。執筆を思い至ったきっかけは今年のファイナルズです。

もちろんルールは理解した上での感想なのですが、1試合目の状態があまりにも悪いところから調子を上げていき、結果的にファイナルズを優勝したチチパスに唯一黒星をつけたナダルが、SFではいいところなく敗退したズベレフよりもRR突破にあたっては下位になってしまったということが惜しかったです(メドベージェフが復調できなかったことが誤算でした)

そこで、「RRを突破できるパターンをきちんと考えてみるか」と思い至った結果がこの記事です。

それでは本編に入ります。

 

まず、勝ち上がり方を記述するにあたって、本記事での表記について説明します。RRでは1位と2位の選手は別のグループに、3位と4位の選手も別のグループに、5位と6位の選手も別のグループに、7位と8位の選手も別のグループにわけられます。この時、各グループでランキングが上位の選手から順にABCDとします。つまり、A(1位か2位の選手)、B(3位か4位の選手)、C(5位か6位の選手)、D(7位か8位の選手)です

今年で言うと、アガシ組は「A(ナダル)、B(メドベージェフ)、C(チチパス)、D(ズベレフ)」、ボルグ組は「A(ジョコビッチ)、B(フェデラー)、C(ティエム)、D(ベレッティーニ)」です。

各グループ内での議論は同じものになるので、以下では一方のグループのみを考えます。

RRは各組全6試合です(A-B/A-C/A-D/B-C/B-D/C-D)。この6試合全ての勝敗の和は6勝6敗です。この6勝6敗を実現する勝敗のパターンとしては以下のいずれかになります(①~④はA~Dとは別だと思ってください)。

 

①3-0

②2-1

③1-2

④0-3

→①と②の勝ち抜け確定

 

①3-0

②1-2

③1-2

④1-2

→①のみ確定

 

①2-1

②2-1

③1-2

④1-2

→①と②の勝ち抜け確定

 

①2-1

②2-1

③2-1

④0-3

→①~③で不確定

 

不確定になるのは、1勝2敗の選手が3人、もしくは2勝1敗の選手が3人になるという場合です。

 

これらを網羅したのが次の表になります。列名の「〇試合目」は、正確に言うと「〇日目の試合(2試合分)」です(紛らわしい表現で申し訳ないです)。スコアは全て同じもの(=失セットや失ゲームによる差がない状態)だと仮定してください。また、選手の棄権やそれに伴うリプレースもないものとします。

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RR勝敗一覧

1日あたりの勝敗が4パターン、それが3日分なので4×4×4=64通りになります。

右から2列目の「勝ち数だけで決まる」列ですが、〇は勝ち抜けの2人が確定するパターン、アルファベット1文字の場合はそのアルファベットのみ勝ち抜けが確定する(=残り1人はセットやゲームが関わってくる)パターンです。

一番右の列は、勝ち抜けする2人の選手が確定している場合、その2選手を示しています。

 赤く塗りつぶしたパターンが、冒頭で示した勝ち抜けする2選手が確定しないパターンに相当します。

 

今年で言うと、アガシ組がパターン50、ボルグ組はパターン28です。

パターン50は不確定に相当しますが、ナダルが2試合目で1セット、3試合目でも1セット落としたことによって、勝ち抜けの2人が確定しました。

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アガシ組3日目の勝ち抜けパターン(ATP公式より)

上の画像はパターン49~52に相当します。左上が49、左下が50、右上が51、右下が52です。前述の通り、ナダルの失セットの関係でパターン50は試合前の時点で勝敗のみで勝ち抜けが決まりますが、パターン51はメドベージェフの失セットによって勝ち抜けが変わります。

 

ちなみに全64パターンですが、基本的にはランキング上位の選手の方が勝ち抜けしやすいはず(実力を考えたら当たり前)なので、Aが3敗するパターンやDが3勝するパターンは、発生確率は低いはずです。逆にAの選手がずば抜けて強い(例:BIG4のうちナダルが欠場し、片方のグループにBIG4が1人だけいる場合)こともよくあるので、Aが3勝するパターンの発生確率は高いはずです(実際、フェデラー特にジョコビッチが3勝するパターンが多かったです)。ただ、意外とABCの差は小さかったです(さすがにDは大きい)。

ABCDの勝ち抜け実績をまとめたのが以下の表です。

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2009~2019年のRR突破選手とシード帯

この表のA~Dをカウントしたものが以下になります。

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シード帯別人数

Cが多い理由についても調べてみましたが、大体誰かしら怪我や不調の選手がいたり、逆にBIG4の誰かが(その年は不調で)ランキングを下げていたことによって、本来Cに相当する選手がBに繰り上がっていたりすることが要因のようです(下記内訳参照)。

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上位選手敗退内訳

よくあるのはナダルが怪我や疲労などによってコンディションが良くなくて敗退もしくは棄権するというパターンです。また、2016年ワウリンカや、2017年ズベレフ・ティエムのように、安定感に欠ける選手が実力を発揮しきれずに敗退というパターンもあります。あと、2011年ジョコビッチや2019年メドベージェフのように、シーズン後半~終盤にバテて失速してしまったことによる敗退というパターンもあります。

1人や2人、AかBから敗退する選手がいること自体は割とよくあることなので、結果としてCの選手がRRを突破することは多いようです。

ちなみにDの選手が突破した事例ですが、2013年を除いてBIG4が2人以上敗退しています。イメージとしては大荒れの2017年(ディミトロフとゴファンの決勝)や世代交代を予感させる今年(チチパスとティエムの決勝)のような大会だと思ってください。なお、除外した2013年はDがワウリンカです(ハマった時は強い選手なので、他の年ほど意外性はないと思います)。

ところで

冒頭で「RRを突破できるパターンをきちんと考えてみるか」と書きました。結論から言うと、

全部勝てばいい(当たり前)。

・勝てる試合は極力セットやゲームを落とさずにワンサイドゲームにする。

・負ける試合は最低でもフルセットに持ち込みつつ、極力ゲームをとる。

・勝つにしろ負けるにしろ、きちんと3試合をこなす(これ、結構重要です)。

ということになるので、実は今回の記事の大部分は蛇足です()。

※4つ目の3試合こなすということについてですが、2勝0敗の選手(1試合こなしていない)と2勝1敗の選手の方がいる場合、同じ2勝であっても後者の選手を優先するというルールになっています。

あとがき

本文にはほぼ関係ありませんが、今回の執筆のために、尊敬するTSDさんに倣ってATP公式ルールブックのファイナルズの項目全てに目を通しました(勝ち抜けの条件で不安があったので)。一応、初めて知った内容もあったのですが、ルールブックを読むのにかけた時間と労力に対するリターンがあったかというと微妙なところです()。

ルールブックですが、なんと400ページ(←!!!)という大ボリュームのpdfファイルです。たとえ英語がスラスラ読めるとしても、さすがにページ数は多いと思います。暇を持て余している方、暇つぶしにはもってこいだと思うのでいかがでしょうか()。