※集計の都合上、文中のデータは2019/10/4時点でのものです。
こんにちは。Dhi-Zuです。
今日はテニスの勝率について緩く考えてみようという内容です。
一応、テニスを知らない人にもわかるように書くつもりですが、それでもわからなかったらすみません(と、先に謝っておく)。
突然ですが問題です。
錦織の通算勝率はどれぐらいでしょう?
次の4つから選んでください。
①約80%
②約70%
③約60%
④約50%
正解は「②」です。(白文字なのでマウスで反転してください)
錦織のサーフェス別勝率
サーフェスとはコートの種類のことだと思ってください。
具体的にはハード(コンクリート)、クレー(赤土)、グラス(芝)の3種類です。
これら各サーフェス別での錦織の勝率は下記の通りになります(トータルは、ハード、クレー、グラス全ての合算です)。
サーフェス | 試合数 | 勝 | 負 | 勝率 |
トータル | 593 | 403 | 190 | 68.0% |
ハード | 395 | 268 | 127 | 67.8% |
クレー | 133 | 94 | 39 | 70.7% |
グラス | 64 | 40 | 24 | 62.5% |
※トータルの勝利数については、ハード、クレー、グラス以外のサーフェス(カーペット)での1勝が含まれています。
トータルでの勝率は68%ですが、この勝率は高いと思いますか?
それとも低いと思いますか?
大雑把ではありますが、実際に考えてみましょう。
8勝4敗で66.7%、9勝4敗で69.2%なので、68%という勝率は約2勝1敗のペースです。
つまり、大体3試合に1回ぐらいは負けていることになります。
2勝1敗という部分だけを見ると「えっ、3回に1回も負けてるの?」と思う方が多いのではないでしょうか。
その感覚自体はごく自然なものだと思います。
ただ実際には、この勝率は世界10位程度の選手として相応しいだけの数値なのです。
※ちなみに、この68%については、錦織が世界トップ10に定着するよりも前の勝敗も含まれています。トップ10定着以降のみに限定すると、勝率はもう少し上がります。
シードについて
世界10位の勝率を考える前に、先にシードについて簡単に説明します。
基本的に、シードは世界ランク上位の選手から順に第1シード、第2シード、・・・、と割り当てられます。
欠場などがない限り、主要な大会では「世界ランク=シード」となります。
(世界ランクの決め方についてはここでは触れません。気になる方はご自身で調べて下さい。)
次に、このシードに基づいてシードの振り分けが決まります。
具体的には
・第1、第2シードは決勝で対戦する
・第3、第4シードは準決勝で第1シードか第2シードの一方と対戦する
・第5~第8シードは準々決勝で第1~第4シードの誰かと対戦する
ような振り分けになります(協調した部分については後ほど触れます)。
第3、第4シードが第1、第2シードのどちらと対戦するかはランダムです。
同様に、第5~第8シードが第1~第4シードの誰と対戦するかもランダムです。
大会にもよりますが、16または32シードまで割り当てられることもあります。
また、上位1~8シードは1回戦が免除されることがあります。
シードの意義としては、トーナメントの偏りを緩和することと、有力選手同士が早期に対戦するのを防ぐことが挙げられます。
極端な例えですが、世界1位と世界2位がいきなり1回戦で対決するのは「早すぎる」と思いますよね?
トーナメント表では、「シードが上位の選手が必ず勝つ」という考えに基づいてシードの振り分けが行われます(その結果が前述の「第1、第2シードは決勝で対戦する・・・」です)。
実際には、選手の相性や調子などの要因があるので、シードが上位の選手が必ず勝つわけではないんですけどね・・・。
世界10位程度の勝率とは?
錦織と言えば、2014年の終盤以降トップ10の常連です。
もっと言うと、トップ8の常連でもあります。
錦織のキャリアハイは世界4位ですが、在籍期間的には第5~第8シードの方が長いので、ここでは「錦織は第5~第8シードである」と考えます。
シードの項で書きましたが、「第5~第8シードは準々決勝で第1~第4シードの誰かと対戦する」ことになります。
また、トーナメント表での振り分けについて、「シードが上位の選手が必ず勝つ(と考える)」とも書きました。
したがって、以下では「第5~第8シードの選手は、必ず準々決勝まで勝ち進むが、必ず準々決勝で敗退する」ものと考えます。
※以下では専門用語や略称が出てくるので、補足が多くなります。
MS(一部除く)の場合
※MS:マスターズ。年9大会。
※以下、1~4回戦は1R~4R、準々決勝はQFと略します(R:Round、QF:Quarterfinal)。
・上位シードなので1Rは免除
・1試合目となる2Rで1勝
・2試合目となる3Rで2勝
・3試合目となるQFで1敗
これで2勝1敗(66.7%)
GSの場合
※GS:グランドスラム。年4大会(全豪、全仏、ウィンブルドン、全米)。
※GSでは上位シードに対する免除はありません。
・1R~4Rで4勝
・QFで1敗
これで4勝1敗(80%)
大会数としてはMS2大会に対してGS1大会ぐらいのペースなので、雑に計算すると
2×(2勝1敗)+(4勝1敗)=8勝3敗(72.7%)
ぐらいが第5~第8シードの選手の勝率の目安となります。
※厳密にはGS4大会で16勝4敗、MS9大会で20勝9敗(2大会だけ4Rがある)なので、36勝13敗で73.4%です。
実際には、先ほども述べたように、選手の相性や調子などの要因により、どこかの大会でSF進出したり、逆に早期敗退する分で勝敗が変わります。
また、GSやMSよりもグレードの低い大会にも出場するので、その部分でも勝率は変わります。
(なので上の数字はあくまで目安なのです)
ちなみに、長らくトップ8の常連であったベルディヒやフェレールといった選手の通算勝率は65.2%(ベルディヒ)、66.1%(フェレール)です。
また、錦織の全米優勝を阻止したチリッチが65.7%なので、錦織の68%という通算勝率は立派な数字だということがここからもわかります。
BIG4の勝率ってどうなの?
ここからはおまけです。
長らくテニス界を支配しているBIG4(フェデラー、ナダル、ジョコビッチ、マレー)の勝率について考えます。
まずはBIG4のサーフェス別成績の一覧です。
選手 | サーフェス | 試合数 | 勝 | 負 | 勝率 |
フェデラー | トータル | 1499 | 1231 | 268 | 82.1% |
ハード | 922 | 771 | 151 | 83.6% | |
クレー | 293 | 223 | 70 | 76.1% | |
グラス | 214 | 187 | 27 | 87.4% | |
ナダル | トータル | 1163 | 967 | 196 | 83.1% |
ハード | 589 | 458 | 131 | 77.8% | |
クレー | 475 | 436 | 39 | 91.8% | |
グラス | 91 | 71 | 20 | 78.0% | |
ジョコビッチ | トータル | 1069 | 884 | 185 | 82.7% |
ハード | 673 | 565 | 108 | 84.0% | |
クレー | 269 | 214 | 55 | 79.6% | |
グラス | 113 | 95 | 18 | 84.1% | |
マレー | トータル | 863 | 667 | 196 | 77.3% |
ハード | 571 | 445 | 126 | 77.9% | |
クレー | 153 | 107 | 46 | 69.9% | |
グラス | 128 | 107 | 21 | 83.6% |
※ここでもトータルの勝敗にはカーペットでの成績が含まれています。
マレー(クレー)
この表の中で最も勝率の低いマレーのクレー勝率が約70%ですが、これは本人比で得意な錦織のクレーと同じぐらいの勝率です。
フェデラー(ハード)、ナダル(トータル)、マレー(グラス)
3人の勝率が約83%です。
大体5勝1敗ペース(勝率83.3%)とすると、
・MS
4勝1敗を5回で20勝5敗、5勝0敗を足して25勝5敗。
つまり、6大会出て1回優勝、5回準優勝のペース。
・GS
必ず準決勝まで勝ち上がる(そこで敗退する)ペース
になります。異常ですね()。
ジョコビッチ(ハードとグラス)も大体同じような勝率です。
フェデラー(グラス)
87.4%なので7勝1敗ペース(87.5%)とします。
グラスにMSはないのでGSだけを考えます。
・GS
6勝1敗を7回で42勝7敗、7勝0敗を足して49勝7敗。
つまり、7大会で1回優勝、6回準優勝のペース。
実際には前哨戦の大会で負けたり、GSでも早期敗退した年があるので、その分だけ優勝は多いです。出場すればほぼ確実に決勝まで勝ち上がってくるペースなわけですから異常です()。
ナダル(クレー)
フェデラーの87.4%ですらおかしなことになっていたので、クレーナダルの91.8%は考える前からおかしいことが容易に想像できると思います。
91.8%なので11勝1敗ペース(91.7%)とします。
・MS
4勝1敗を5回で20勝5敗、5勝0敗を7回で35勝0敗。
これらを合わせて55勝5敗。
つまり、12大会で優勝7回、準優勝5回のペースです。
大雑把に考えれば、3大会で2大会は優勝、残り1大会も準優勝なので、出場すれば必ず決勝まで勝ち進み、7割ぐらいの確率で優勝するわけです。意味が分かりません()。
ちなみに、GS(全仏)でのナダルの通算成績は93勝2敗(97.9%)です。
これまで15回出場していて、12回優勝(4連覇+5連覇+3連覇)。
優勝できなかった3回は「2009年4Rソダーリン」、「2015年QFジョコビッチ
」、「2016年3R前棄権(試合前棄権なので負け数は増えない)」のみです。
割合的には5年に1回負けるかどうかというぐらいなので、ナダルが全仏で負けるということは、他の誰かが優勝することよりも衝撃的なビッグニュースになります(10年以上、優勝して当たり前とみなされているのがおかしい)。
あとがき
本当はもっとサクッと書き上げるつもりだったのですが、いざ書いてみるとなかなか時間かかりますね・・・。
大体4000字ぐらいですが、それでも4~5時間はかかりました()。
ついでに、勝敗数を調べたり、予備考察の時間も含めると10時間ぐらいかかっているので、次回以降はもっと短いものにしたいですね・・・。